「立派になっただろ?僕。」

 そう言って、矢吉はずずっと鼻をすすりました。

「本当にあの矢吉…?でもどうして…」

「梢は、僕がいらなくなったから捨てたんだと思って、ずっと恨んでた。本当は一緒にいたいと思ってくれていたなんて、知らなかったんだ。ごめん、あんな所に連れて行って…」

「そんな、私の方こそ、突然いなくなってごめんね…」

 私は、また溢れてきた涙を手で拭いました。


それから、真っ直ぐ矢吉と向かい合って握手をし、少し笑い合いました。

「さぁ、もう時間だ。」

 長老に言われて振り向くと、列車が扉を開けて私を待っています。

「矢吉、一緒に行こう。また一緒に暮らそうよ。」

 私がそう言うと、矢吉はもう一度鼻をすすり、俯いて「ありがとう」と言いました。


「でも、行けない。僕はもう立派な野良猫のリーダーなんだ。…たまには、遊びに行くから」

 そう言って笑った矢吉の表情は、私が拾った頃のあの弱々しさは無くて、明るく、どこまでも強いものでした。

だから私もそれ以上は何も言えず、精一杯の笑顔で頷いて見せました。


 頃合いを見計らったかのように列車は動き出しました。

私は小さくなっていく動物駅は、いつまでもいつまでも見送っていました。


こうして、私の田舎村での生活は再び幕を開け、私は大好きな故郷で、おばあちゃんの手作りの新鮮な野菜を食べてのびのびと過ごしました。

 矢吉は、言葉通りたまに遊びに来ては私にちょっかいを出します。


 ただ、何度あの列車に乗っても、動物駅へはもう二度と行けませんでした。


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