ハロウィンの奇跡

 

 これは、僕と親友の、忘れられない物語。

 季節は、秋。

 この街に引っ越してきたばかりの僕は、上手く友達が作れずに悩んでいた。

学校ではもうすぐ行なわれるハロウィンのイベントに向けてみんな盛り上がっているけれど、この街にも学校に馴染めない僕は、ゆううつな気持ちを抱えたまま、家に向かう通学路をトボトボと歩いていた。

 川沿いに伸びる通学路を秋の冷たい風が吹き抜けて行く。

「さみしいなぁ…」

 思わず、そうつぶやいた。

 すると

「どうしてさみしいんだい?」

 どこからか返事が聞こえてきた。驚いて辺りを見渡すと、土手を下ったところに1人の男の子が立っているのが見えた。

 僕と同じ、小学4年生くらいだろうか…

 なんと答えて良いのか分からなくてその男の子を見ていると

「どうしてさみしいんだい?」

 もう一度、そうたずねられた。

「僕、引っ越してきたばかりで、友達がいないんだ。」

 そう答えると、その男の子はニカッと笑い、こちらへ駆け寄ってきた。

「そうか。じゃあ俺と同じようなものだな。友達になってやるよ!」

 男の子が僕に向かって右手を差し出す。

何をして遊んでいたのだろう…その男の子の手にはすすのような黒い物がたくさんついていて、僕は少しためらいながらも彼の手を握り返した。

「よし!これで俺たちはもう友達だ。名前は、何て言うんだ?」

「僕は、レン。君は?」

「俺は、ケン。ケンとレン、か。いいコンビだな!」

 そう言ってケンが笑うから、僕もつられて笑った。ケンは、僕がこの街に来て初めてできた友達だった。

 それから僕とケンは毎日遊んだ。ケンは僕の通う学校の生徒ではなかったから、学校が終わってから、出会った土手に集合するのが日課だった。

「ケンの学校は、ハロウィンのイベントはやらないの?」

 ある日僕がそうたずねると、ケンは首をかしげた。

「ハロウィン?ハロウィンって、何だよ?」

「知らないの?10月31日はハロウィンって言って、子供は皆オバケや魔女の格好をして大人からお菓子を集めるんだよ。」

「オバケの格好をする?変な行事だなぁ。でも、楽しそうだ!」

 そう言ってケンが羨ましそうに笑うから、僕はどうしてもケンと一緒にハロウィンをしたくなった。

「そうだ、ケン。君もその日だけ一緒に僕の学校に行こうよ。ハロウィンにこっそり参加するんだ。」

「でも俺、君の学校の生徒じゃないよ。」

「大丈夫!みんな仮装してるから、1人くらい混ざってたって気付かないって。」

「本当かい?」

「もちろん、ケンが一緒だと、僕も楽しい。」

 こうして僕たちは、一緒にハロウィンのイベントに参加することを決めた。

 けれど…

 

「嫌だ。俺はこんな布切れ、かぶらないよ。」

 ケンは、僕がケンのためにと持ってきた、オバケの仮装用の布をつっぱねた。

「ケン。君は僕の学校の生徒じゃないんだし、見つからないようにするためにも、かぶってよ。」

 僕が必死にそう説明しても、ケンは受け取ろうとしない。

「レンが使えばいいだろ。俺はいらない。必要ない。」

「ケン!!」

 僕が思わず大きな声を出すと、ケンは肩をすくめて見せた。それから、こんなことを言い出した。

「レン、俺は、オバケなんだよ。だから、仮装なんていらないんだ。」

「何言ってるの?ケン。…そんなに仮装が嫌なら、もういいよ!」

 言い訳するレンに腹が立った僕は、持っていた布をケンに投げつけ、走って家に帰った。

 そしてその日を境に、僕はケンと毎日遊んでいた土手に行かなくなった。

 

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