第8話 本当の想い


○カラフルな花が咲き誇る美しい日本庭園


 私は、常盤の城の庭で1人、常盤と出逢ってからのことを思い出していた。


@萌黄

(初めて会った時は、ものすごく強引に妻になれなんて言われて、何て勝手で人の話を聞かない人なんだろうって思ったけど・・・)


 常盤にもらった着物、簪、それらは、いつの間にか私の体になじんで、いつも着ていた洋服以上にお気に入りになっていた。


@萌黄

(やっぱり、外交のために私のそばにいただけだよね。私のことが好きだったわけじゃないんだから・・・)


 常盤の、「妻に出来ぬ」という言葉だけが妙に頭から離れず、心にずっと鈍い痛みを生じさせる。


@常盤

「萌黄。こんな所でなにをしておる。」


 私の姿を見つけた常盤が小走りに近づいてきた。

 いつもの常盤の屈託のない笑顔が、今日はなぜか遠く感じる。


@萌黄

「みんな、外交の準備で忙しそうだから、邪魔にならないようにしようと思って。」


@常盤

「何を言うておる。おぬしはこの国の恩人なのじゃぞ。邪魔なわけがあるまい。」


 常盤はそう言って私の横に腰を下ろした。


@萌黄

「いいの?みんなの所にいなくて。」


@常盤

「うむ。しばしの休憩じゃ。それに、少し、おぬしと話がしたくての。」


 そう言って優しく微笑む常盤は陽の光をあびてキラキラしている。

 その眩しさにドキドキして、思わず目を逸らした。


@萌黄

「体調は、どう?」


@常盤

「すぐには良くならぬが、回復していることは感じる。最近はようやく食欲も出てきた。」


 言われて、町へ出た時に団子を食べようとしなかった常盤を思い出した。


@萌黄

(あれは、お腹が減っていないんじゃなくて、食べられなかったんだ・・・)


@萌黄

「常盤、無理はしないでね?ちゃんと完治させて、この国の人たちを安心させないとね。」


@常盤

「うむ。そうじゃの。・・・・萌黄、おぬしは・・・」


@萌黄

「え?」


@常盤

「おぬしは、わしの体が完治したら、喜んでくれるのか?」


@萌黄

「当たり前でしょ。常盤には笑顔でいてほしから・・・常盤って、強引だしめちゃくちゃだけど、一緒にいる人を笑顔に出来る力がある。」


 そう言って常盤を見ると、常盤は優しくも力強い眼差しでまっすぐ私を見ていた。

 その瞳に射抜かれて、心臓が飛び跳ねる。


@萌黄

「常盤・・・?」


@常盤

「萌黄、おぬしに聞いてほしいことがある。」


 いつになく真剣な表情の常盤に、なんだか落ち着かない。


@常盤

「わしは、おぬしを開国のキッカケとして利用したくて、妻になれと言った。そのことを、誠に申し訳なく思っておる・・・許してもらえるか?」


@萌黄

「そんなの・・・いいよ。常盤が国のために一生懸命なのは、見てて分かったから。」


@常盤

「・・・かたじけない。・・・そのうえで、おぬしに改めて伝えたい。」


 常盤の手が私の頬に触れる。

 大きな手が私の頬を包み込み、顔が熱くなる。


@萌黄

「常盤・・・・?」


@常盤

「わしは、おぬしが、好きじゃ。・・・おぬしに惚れてしまったようじゃ。」


@萌黄

「え・・・・っ・・・」


 私を見つめる常盤の瞳は熱を帯び、どこまでもまっすぐで身動きが取れなくなってしまう。


@常盤

「おぬしは、わしを、どう思っておるのじゃ?・・・良い答えでなくとも構わぬ。おぬしの偽りの無い気持ちを聞かせてはくれぬか。」


@萌黄

「私は・・・常盤に、妻になる必要がないって言われた時、すごく、寂しかった。胸が痛くて、どうしてか考えたんだけど・・・私も、常盤のことが好きになってたみたい。常盤が、私を妻にするって言った理由、私が他国の人間だからじゃなくて、私自身を好きだから、そばに置きたいから、だったらいいのにって、そう思ってた・・・」


 ドキドキする心を抑えてなんとかそう言葉を紡ぐと、常盤は大きな目を見開き、太陽のような笑顔で笑った。

 そして私をぎゅっと抱き寄せる。


@常盤

「それは、誠じゃな!!おぬしも、わしを好いておるのじゃな?・・・幸せじゃ・・・萌黄、おぬしが愛おしゅうてならん・・・」


 常盤の大きな体に包まれて、心地良いお香の香りが鼻を掠める。

 ドキドキするのに、何だか落ち着く、大好きな温度と香り。


@常盤

「萌黄・・・キス、してもよいかの?」


@萌黄

「え・・・キスって・・」


@常盤

「キス、と言うのじゃろう?口づけを交わすことを。開国へ向けて、おぬしがたまに使う、不思議な言葉も少しづつ学んでおるのじゃ。あっておるかの?」


 顔を上げて常盤を見ると、少年のようにキラキラした瞳で私を見つめている。


@萌黄

「ふふっ・・・うん、合ってるよ。」


 思わず笑って、私は目を閉じた。

 唇にゆっくり下りてくる、常盤の体温。

 意外なくらい優しい口づけの後、私たちはもう一度抱きしめ合った。

 この国は、これからきっとどんどん変化していく。

 けれど、変わらず常盤の隣にいたい、そう願いながら、眩しい常盤の笑顔を見つめていた・・・。


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