第4話 デート


○美しい掛け軸が掛かっているきらびやかな和室 


@常盤

「萌黄、準備は良いか?」


 戸の向こうから常盤の声がする。

 今日も常盤色の着物を綺麗に着付けてもらった私は、慌てて返事をして戸を開ける。


@萌黄

「お待たせ。もう大丈夫。」


 今日は、常盤と花染国の商店街で買い物をする約束をしていた。

と言っても、相変わらず強引な常盤に、ほぼ一方的に約束を取り付けられたのだけど・・・


@常盤

「うむ、今日も美しいぞ、萌黄。」


 常盤は私の姿を確認して満足そうに頷くと、手を引いて早足に歩き始めた。


@萌黄

「ちょ・・・ちょっと、常盤!そんなに急がなくても・・・」


 歩幅の広い常盤に引っ張られるようにして、駆け足でついていく。


@紅

「常盤様、どちらへ行かれるのです?」


 廊下の向かいから歩いてきた紅が私たちを見て声をかけるが、常盤は足を止めようとしない。


@常盤

「わしは今から、萌黄に似合う髪飾りを探しに行くのじゃ。留守は頼んだぞ。」


@紅

「常盤様!くれぐれも、西の祠には近づかぬよう!!」


 すれちがいがてら紅がそう言うのが聞こえる。


@萌黄

「常盤、西の祠って??」


@常盤

「おぬしは知らぬとも良い。さぁ、町へ繰り出すぞ!」


 常盤に手を引かれるままに歩いているうちに、気付けば商店街に来ていた。


○色とりどりで古風な商店街


@萌黄

「どこか、目的のお店があるの?」


@常盤

「そうじゃ。いい店がある。おぬしを是非連れて行きたいのじゃ。」


 そう言って嬉しそうに笑う常盤の瞳はきらきらしていて、まるで少年のようだ。


○色とりどりの簪や櫛が並ぶ装飾店


 常盤に連れられてたどり着いたのは、カラフルな装飾品が所狭しとならんだ、小さなお店だった。


@萌黄

「素敵な髪飾りがいっぱい・・・この国は本当に色が豊富なんだね。」


@常盤

「そうじゃろう。これだけの品ぞろえがあれば、萌黄の気に入る物も見つかろう。」


@萌黄

「あっ・・・これ、可愛い!あ、でもこっちも素敵・・・」


 置いてある装飾品はどれもセンスが良くて、思わず目移りしてしまう。

 常盤は、そんな私の様子を穏やかな笑顔で見ている。


@萌黄

「これ・・・もしかして、常盤色?」


 ふと目にとまった簪を手に取る。それは繊細なガラス細工の花が施され、私の着物と同じ色をしていた。


@常盤

「その通りじゃ。おぬしによく似合う。どれ、つけてやろう。」


 常盤の大きな手が私の髪に触れる。その優しい手つきに何だかドキドキする。


@常盤

「うむ!やはりよく似合う。見るがよい。」


 手鏡を渡され、覗き込むと、着物と簪のバランスが絶妙に惹き立て合い、とても品が良い組み合わせだった。


@萌黄

「着物にぴったり・・・」


@常盤

「よし、ではこれをわしからの贈り物としよう。」


 常盤は、私に有無を言わせず、あっという間にお会計を済ませてしまった。


○いろとりどりの商店街


@萌黄

「常盤、わざわざプレゼントしてくれなくてもいいのに。この前着物ももらっちゃったんだし・・・」


@常盤

「ぷれぜんと?よく分からぬが、おぬしは何も遠慮する必要はない。わしが好きでやっていることじゃからの。」


@萌黄

「でも・・・」


@常盤

「萌黄、団子は好きか?」


@萌黄

「え?う、うん、好きだけど・・・」


 突然の質問に面喰いながらそう答えると、常盤は私との会話を断ち切るように団子屋の方へ歩いて行ってしまう。


@萌黄

(これは、常盤なりの気遣い、なのかな・・・)


@常盤

「ほれ。団子じゃ。食え。小腹も空くころであろう?」


@萌黄

「あ、ありがとう・・・常盤は食べないの?」


 常盤の手には串団子が一本しか握られていない。


@常盤

「わしは良い。あまり腹は空かぬ。」


 常盤から団子を受け取る時に触れた常盤の手が、妙に熱く感じる。


@萌黄

「常盤、手が少し熱い・・・」


@常盤

「そうかの?団子が出来たてだからじゃな。」


 そう言って常盤は笑うが、何か違和感を感じた。


@萌黄

「常盤、何だか顔色も良くない・・・もしかして、体調悪いの?」


@常盤

「何を申す。わしは健康じゃ。つまらぬ心配をするでない。」


 そう言うが、明らかに顔色が悪い。

 嫌な予感がして、常盤の額に触れようと手を伸ばした。

 常盤は、その私の手をよけようとしたのか、体をのけぞらせ・・・そのまま、ぐらり、と倒れこんでしまった。


@萌黄

「常盤!?」


 慌てて常盤の大きな体を支える。


@萌黄

(気のせいなんかじゃない、常盤の体、すごく熱い・・・)


@常盤

「・・・・っ・・・」

 

 さっきまで笑っていたはずの常盤の息が乱れている。

 どう見ても異常だった。


@萌黄

(どうしよう・・・私1人じゃ大きな常盤の体を運べない・・・)


 そう思って途方に暮れていると、どこからともなく黒い服に身を包んだ男が現れ、常盤を担ぎあげた。


@黒い男

「萌黄様、私が常盤様を運びます。城へ戻りましょう。」


メモ: * は入力必須項目です