第3話 色彩の大奥


○美しい掛け軸が掛かっているきらびやかな和室 


 目の前に並んだ、色とりどりの着物に身を包んだ美しい女性達に怒りの眼差しを向けられ、私は思わず後ずさる。


@萌黄

「常盤・・・これ、どうなってるの??」


 怖くなった私は思わず常盤を見つめる。


@常盤

「萌黄・・・怖いのか?それは、すまんのう。」


 そう言うと、常盤は女性達の前へ歩み出た。


@常盤

「もう良いじゃろう。見せ物ではない。おぬしらは部屋へ帰るのじゃ。」


@赤い着物の女性

「そんな、常盤様、納得が行きません・・・」


 常盤は、そんな女性の言葉に耳を貸さず、戸を閉めようとする。

 すると、


@年配の女性

「これは何の騒ぎです!?」


 集まった女性達のさらに奥から、ひときわ迫力のある声が響いた。

 女性達は慌てたように道を開ける。


@常盤

「紅(くれない)か・・・」


 姿を現したのは、周りの女性より一回り年配の女性だった。


@紅

「常盤様。このように騒ぎを起こしていただいては困ります。説明していただけますね?」


@常盤

「そうじゃの。紅には言わねばなるまい。」


 常盤が紅、と呼んだその女性を部屋へ入れると、さっきまでの勢いが嘘のように、集まっていた女性達は部屋の前から去って行った。


 部屋には常盤と紅、そして私が残された。


@紅

「常盤様。私に黙って、また国を出ておいででしたね?戻って来たかと思えばこの騒ぎ・・・無断で女性を連れてこられては困ります。」


@常盤

「まぁ、そう目くじら立てずとも良いではないか。この城はわしの城じゃ。客人を招くのもわしの自由じゃ。」


@萌黄

「えっと・・・何だか私のせいで、すみません・・・」


 居心地が悪くなって思わず小さく謝る。


@常盤

「萌黄が謝ることではない。おぬしは堂々としておれ。」


@紅

「そちらのお嬢さんは常識をお持ちのようで安心しましたわ。自己紹介が遅れました。私、この城の取締役であり、常盤様の世話方、紅、と申します。」


 紅が私の方へ体を向け、丁寧に挨拶をし、つられて私もお辞儀をする。


@萌黄

「はじめまして、私は萌黄と言います。」


@常盤

「紅、わしはこの娘を妻にしようと思うのじゃ。」


@萌黄

「ちょっと・・・!!」


@紅

「なんと!!」


 私が反論しかけたのを遮って紅が大きく驚く。


@紅

「そういうおつもりで連れてこられたんですね。それでしたら・・・」


 嬉しそうに頷く紅だったが、ふと私の手元を見て、動きを止めた。


@紅

「見慣れない装飾物ですわ。・・・あなた、花染国の娘じゃありませんわね?」


 厳しい紅の視線の先にあるのは、着付けの時に外し忘れていた腕時計。

 いぶかしむような顔で見られ、不思議に思いながらも、私は事情を説明した。

 すると、さっきまで嬉しそうだった紅の表情がみるみる険しくなっていく。


@紅

「トロイメアの王族、ですって・・・?常盤様!どういうおつもりです!?よりによって他国の者を妻にするなどと!何のために私がいるとお思いなんです!」


@萌黄

「え・・・?」


@常盤

「紅、落ち着け。以前から言っておったじゃろう。この国は閉ざされすぎておるのじゃ。なぜそうも国の中での結婚にこだわる?わしは、この娘と祝言を挙げ、それを機にこの国を開かれた国へと変えたいのじゃ。」


@萌黄

(閉ざされている・・・?じゃあ、私がこの国に来て感じた違和感は、外交をしていないために未発展だったからなんだ・・・)


 2人の会話を聞いていて、なんとなく状況が分かってきた。


@萌黄

(常盤は、それを変えようとしている。そのために私と、この国の人間じゃない人と結婚したいんだ・・・。じゃあ、私じゃなくても、他国の女の子ならだれでも良かったってこと?)


 そう考えた途端、チクリと胸が痛んだ。


@萌黄

(あれ??どうして私、がっかりしてるんだろう・・・)


@紅

「常盤様!目を覚まして下さいませ!外交など行ったところで、悪い病や下品な文化が広まるだけです。わざわざ他国の娘まで連れて来ずとも、この国の中に美しい娘はいくらでもおります。いくらでも城へ住まわせますわ。」


@常盤

「目を覚ますのは、この国の者たちの方じゃ。このままではこの国は貧しいまま。何も発展出来ず、孤立するのじゃ。わしは、おぬしの用意した、見た目が美しいだけのおなごなど、好きにはなれぬ。この城にいる娘どもは皆、自分の意志など持っておらぬではないか。わしは、萌黄を妻にしたいのじゃ。」


 常盤が力強くそう言って、私をぐっと抱き寄せた。


@萌黄

「きゃぁ!!常盤!?」


 紅がぽかんと口を開けて私を見ている。


@紅

「・・・そこまでその娘を・・・ですが常盤様、私がそれを認めたとして、この国の者たちや、城の娘たちが納得すると思うのですか?」


@常盤

「納得させて見せよう。この国の王はわしじゃからの。」


 私を抱きしめる常盤の腕に力がこもる。

 密着した常盤の体は大きくて温かくて、ドキドキしてしまう。


@紅

「・・・良いでしょう。ただし、それが出来なければ、諦めてこの国の娘と結婚していただきます。」


 そう言い残すと、紅は部屋を出て行った。


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