第5話 国の願い


○素朴な町並み


私は、クロウには内緒で1人色彩の国へ訪れていた。


@ノエル

(この国はこのままでいいわけがない・・・何とか、国を元に戻すためのヒントになるような物が見つかれば、クロウの自信も戻るかもしれない)


そう思うながら先日クロウと一緒に歩いた城下町を辿っていると・・・


@町人

「あなたは・・・もしや、カラス王子と一緒にいた姫様では?」


突然、1人の男性に呼び止められた。


@ノエル

「カラス王子、って、クロウのことですよね?」


@町人

「これは失礼・・・すっかりこの呼び名が定着してしまいまして。今日は王子はご一緒ではないのですか?」


@ノエル

「はい。今日は私1人です。」


@町人

「そうですか・・・あの、王子へ伝言をお願いすることはできませんか?私たち国民が話しかけようとすると、あのお方はすぐに逃げてしまわれる。」


@ノエル

「伝言・・・ですか。何でしょう?」


@町人

「聞いていただけますか!あの、王子に、国へ帰ってきてほしいと。そして、この国を治めていただきたいと。それが国民全員の願いです。」


@ノエル

「・・・え??」


意外な言葉に耳を疑った。


@町人

「カラス王子なら・・・あの、王家に生まれながらいつも黒い衣しか纏わないあのお方なら・・いえ、あのお方にしか、今の国を元に戻せません。」


@ノエル

「カラス王子って、悪口かと思ってた・・・」


@町人

「とんでもない!あなたは、ご存じありませんか?カラスというのは、ギリシャ神話では太陽の使い。神の鳥であり、元々は王子の髪のように、美しい白い羽を持っていたのです。その白く美しいお姿を黒い衣で隠す王子の姿は、まるで神話のカラスのようだと、いつしか国の者皆がそう呼ぶようになっていたのです。」


@ノエル

「そうだったの・・・。分かりました!クロウ・・・カラス王子に、必ず伝えます。そして必ず彼をこの国に帰します!」


私は力強くその男性にそう伝えると、急いでクロウの元へ向かった。

男性は、何度も「ありがとうございます。」と頭を下げていた。


城下町を出ようとして、ふと町はずれの小高い丘に、見覚えのある姿が目に入った。


@ノエル

「クロウ!!」


○美しく手入れのされた墓地


真黒な布を頭からかぶり、その隙間から白金の髪が光を反射してきらきらと光って見える。その姿は間違いなくクロウだった。

クロウはゆっくりとこちらを振り返ると目を見開いた。


@クロウ

「貴様・・・なぜここにいる?」


私はクロウに駆け寄り、そしてクロウの前にひときわ綺麗に手入れされた、立派なお墓があるのに気づいた。


@ノエル

「王妃様のお墓・・・?」


@クロウ

「・・・・・。」


クロウは何も言わなかったが、その手に抱えられた美しい花束が、それを肯定していた。


@ノエル

「とても綺麗に手入れされてる・・・クロウがやってるの?」


私がそう尋ねると、クロウは小さく頷き、お墓に膝をついて丁寧に花を供えた。


@クロウ

「それでお前は、何をしに来た?」


@ノエル

「あの・・・おせっかいだとは思うんだけど、どうしてもこの国のことが気になって、もう少し現状を知ろうと思ったの。」


@クロウ

「おせっかいだな。」


身も蓋もなく言われてしまう。


@ノエル

「だけど、部外者だからこそ冷静に見られる部分はある。クロウ、あなたに伝えたいことがあるの。さっき町の人に伝言を頼まれたんだけど。」


@クロウ

「伝言・・・?」


@ノエル

「そう。この国の人たちはクロウの帰りを待ってる。そして、キュクノスじゃなくてクロウに国を治めてほしいって、そう願ってる。」


@クロウ

「何をでたらめを。」


@ノエル

「でたらめじゃない!クロウは町の人の言葉に耳を傾けようとしたことがある?話も聞かずに逃げて・・・町の人たちは、クロウが、あなたが本当の王子だってちゃんとわかってる。クロウの居場所は、この国にちゃんとあるんだよ。」


クロウが、私から目を逸らす。

私は思わず、クロウの頬を両手で包み、しっかりと目を見据えた。


@クロウ

「貴様・・・」


クロウは目を見開いて私をじっと見つめたかと思うと、ふっと力を抜いたように目つきが優しくなった。


@クロウ

「・・・変な女だとは思っていたが、何てまっすぐな目をしている。」


そう言われ、自分とクロウの顔が近いことに気付いた。


@ノエル

「あ・・・っ・・・つい力が入っちゃって・・・ごめん。」


慌てて身を離そうとすると、頬から離した手を、クロウの手が掴んだ。


@ノエル

「え・・・?」


そのまま引き寄せられ、今度はクロウの手が私の頬に触れた。


@クロウ

「初めてだ。そんなにまっすぐに俺を認めようとする女は。本当に・・・変な女だ。」


@ノエル

「そんなに変、変、って連呼しないでよ・・・」


クロウの手から伝わる体温は、その白い肌からは意外なくらいに温かく、私の体温まで上がってしまう。


@クロウ

「ノエル。・・・お前の言葉なら、信じてもいい。話せ・・・町で、何を聞いた?」


真剣な眼差しでそう言うと、クロウはもう半歩、私に近づく。

私は必死でこのドキドキを悟られないように冷静を装いながら、町の男性に聞いた話をすべてクロウに伝えた。


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