第3話 色彩の国


○素朴な町並み


@ノエル

「ここが、クロウの国・・・」


私は、クロウに案内されて色彩の国へ来ていた。

レイヴンは留守番をすると言ってついてこなかったため、クロウと2人きりだ。

初めて見る色彩の国は、その名のイメージと裏腹に、建築物や装飾物に使われている色が少なく、技術は発達しているようなのに妙に質素で、違和感を覚えた。


@クロウ

「お前は、どう感じる?」


初めて出会った時同様に全身に黒い布を纏ったクロウが静かに言う。


@ノエル

「え??」


@クロウ

「この国の景色を見て、どう感じる?・・・変な気を使わず、率直に聞かせろ。」


@ノエル

「えっと・・・色彩の国だって聞いていたから、もっと華やかでカラフルな街を想像していたけど・・・割と控えめなんだな、って思う。言い方悪いけど、地味っていうか・・・町の人たちの表情もあんまり明るくないね・・・」


正直にそう答えると、クロウはその透き通る瞳でじっと私を見た。


@クロウ

「・・・そうだ。・・・正直なやつは嫌いじゃない。」


意外な言葉に思わずどきっとする。

それからクロウはゆっくりと街の奥へと歩を進めていく。

私もそれに続き、そしてあることに気付いた。


@ノエル

「街の入り口は地味だけど・・・奥に行くにつれて色が増えてる・・・?何だか、歩いてる人たちの服の色も場所によって違うような・・・」


@クロウ

「気づいたか。この国では地位や身分によって使用できる色が決まっている。城へ近づくほど上流階級の家庭が増えるからな・・・街の奥へ向かうほど色が増えるのはそのためだ。」


@ノエル

「色で身分を区別しているの・・・?」


その時、後ろから真っ赤なワンピースを着た少女が私たちの横を駆けて行った。

友達とかけっこでもしているのかな、なんて思っていると、それを見ていたベージュのスカートを着た少女が羨ましそうに母親に言う言葉が耳に入って来た。


@少女

「ママ、私も赤いお洋服着たい・・・」


@母親

「駄目よ。お役人様に怒られちゃうでしょ。将来、お母さんよりずっと偉い人になりなさい。そうしたら、赤いお洋服だって着られるわ。」


@クロウ

「・・・・・」


クロウは、その場から逃れるように歩を早める。


@ノエル

「クロウ。あんな小さな子まで・・・自分の好きな色の服を着ることさえできないの?」


納得が出来ずにそう聞くと、クロウは横目でチラリとこちらを見ただけですぐに視線を逸らした。


@クロウ

「それが、この国の現状だ。・・・今のはわかりやすい例だったな。」


@ノエル

「そんな!どうしてこんな状況を放っておくの?」


@クロウ

「俺にどうにかしろと、そう言っているのか?・・・言ったはずだ。俺は王になる器ではないと。」


@ノエル

「そんな言い方!逃げてるだけじゃないの??だって、クロウはこの国の王子・・・っ!!」


思わず声のボリュームが上がってしまった私の言葉をさえぎって、クロウの手が私の口をふさいだ。


@クロウ

「・・・大きな声を出すな。」


クロウに抱きかかえられるような形でのぞきこまれ、至近距離にせまる美しい顔に鼓動が早まる。


@ノエル

「・・・ごめん。」


思わず謝った、その時


@町人

「あれ・・・?あの黒いマント姿、まさか・・・」


街の人々の視線が私達へ集まるのがわかった。クロウの目つきが急に鋭くなる。


@クロウ

「ちっ・・・ノエル、悪いが今日はもう帰るぞ。」


@ノエル

「え??」


私の返事を待たずに、クロウは私を抱え上げ、そのまま走り出した。


@ノエル

「!?きゃぁぁぁ!」


@クロウ

「静かにしろ。騒がしい女だな。」


@町人

「カラス王子だ!!」


@町人

「カラス王子~~~!!」


遠く後に、街の人たちの声が響いてた。


○木の生い茂る森の中


クロウは、後ろを振り返ることなく、まっすぐに元来た森の中へ入った。

街の気配も音もしない、木々に囲まれた静かな場所まで来ると、ようやく足をゆるめ、私を解放した。


@ノエル

「どうして逃げるの??それにカラス王子って・・・?」


@クロウ

「・・・・」


クロウは何も言わずに目を逸らす。全力で走っていたのか、かなり息が上がっている。


@レイヴン

「おや。お早いお帰りだったね。」


ガサッと音がしたかと思うと、木の上からレイヴンが下りてきた。


@レイヴン

「その様子だと、王子だって騒がれて逃げてきたかな?相変わらずだな。」


@ノエル

「相変わらずって、いつもそうなの?自分の国なんだから逃げなくてもいいのに・・・」


@クロウ

「父上が国を治めていた時はまだ良かった。あんな色の身分も無かった。その名の通り色鮮やかな国だったんだ。だが今のあの国は・・・色を持たない俺など必要としない。」


@ノエル

「どういうこと・・・?」


@クロウ

「聞きたいか。聞きたければ話してやってもいい。」


@レイヴン

「まぁまずは、家へ戻ろう。ここでは落ち着かないだろう。」


レイヴンに促され、私たちは森の中のレイヴンの家だという小屋へ戻ることにした。


メモ: * は入力必須項目です