第1話:森の王子


○木の生い茂る暗い森の中


私は、目覚めた王子に連れられて、森の奥へと向かっていた。

目の前を歩く王子は、頭から足の先まで真っ黒な布をまとっていて、どんな人物なのかも分からない。

かろうじて分かるのは、先ほどポツリとつぶやくように教えてくれた「クロウ」という彼の名前と、そんなに大柄な人物ではないということだけだ。


@ノエル(主人公)

(こんな森の中にお城なんてなさそうだし・・・このままついて行って大丈夫なのかな・・・)


@ノエル

「あの、どこまで行くの・・・?」


 不安に耐えかねて思わずそう尋ねると、クロウはその少し先で足を止めた。


@クロウ

「・・・着いた。入れ。」


そこには、お城とは似ても似つかない、小さな山小屋が建っていた。

私は言われるままにその小屋へ足を踏み入れる。


@ノエル

「おじゃまします・・・」


○質素な山小屋の部屋


部屋の中へ入ると、クロウはようやくその全身を覆っていた黒い布を外した。


@ノエル

「あ・・・・」


思わず、息を飲んだ。

クロウの肌はどこまでも白く、雪のように透き通り、ハッキリとした顔立ちなのにどこか儚く見える。その髪は透き通るように淡い金色で、微かに差し込む日差しにキラキラと輝いている。その下に覗く瞳はガラス細工のような淡い赤紫色をしていた。

どこか幼さも残るその外見は、まるで・・・


@ノエル

(なんて綺麗な男の子・・・まるで人形か天使みたい・・・)


@クロウ

「俺の姿が、気持ち悪いか。」


慣れた手つきで紅茶を淹れながら、クロウが吐き捨てるように言う。


@ノエル

「気持ち悪いだなんて・・・あまりに綺麗で、見とれてしまって。」


@クロウ

「綺麗??何を言っているんだ、貴様は。」


クロウは怪訝な顔をする。


@ノエル

「クロウは、色彩の国の王子様、なんだよね?・・・ここは、別荘か何かなの?」


ふと疑問に思ったことを尋ねてみる。

すると急にクロウの透き通った目が鋭くなった。


@クロウ

「・・・こんな森のボロ小屋へ案内されたのが、不満か?王子ならば城へ連れて行けと、そう言いたいのか?」


@ノエル

「そんなつもりじゃ・・・」


反論しようと口を開くと、白い手が伸びてきて、顎をつかまれた。

そのままクロウの端正な顔が至近距離にせまる。


@クロウ

「俺は、王になる器ではない。王家に生まれたのは何かの間違いだ。色彩の国の城へ行きたいのなら勝手に行け。ただし、俺の名は出すな。」


鋭く美しい目に射抜かれて、怖いのに恐怖以外の理由で鼓動が速くなっているのを感じる。


@ノエル

「お城へ行きたいわけじゃないよ・・・クロウは、ここで生活をしているの?」


@クロウ

「だとしたら、何だ。」


@ノエル

「私はただ、クロウのことをもう少し知りたいだけ・・・」


そう答えると、クロウはふん、と鼻で笑ってようやく解放してくれた。


@クロウ

「おかしな女だな。知ってどうする?笑うか?この幽霊のような俺を。」


@ノエル

「笑ったりしないし、幽霊には見えない。正直私には、クロウが天使のように見える。」


正直にそう答えると、クロウの動きがぴたりと止まった。


@クロウ

「・・・は?お前は、頭がおかしいのか?」


@ノエル

「失礼な!!本当にそう思ったから仕方ないでしょ。だいたい、どうしてそんなにネガティブなことしか言わないの?」


@クロウ

「俺は、存在すべき人間ではないから。」


@ノエル

「・・・え?」


@クロウ

「色鮮やかで美しいと名高い色彩の国の王家に生まれた王子に色素がないなどと、こんなおかしな話はない。わかるか?色を持たない男が、あの国の王位につくなど、あるべきではない。」


@ノエル

「色を持たないだなんて、そんな言い方、しなくてもいいのに。クロウの姿、とても綺麗だと思う。私は、好きだな・・・」


思わずそう言って、ハッとした。もちろん、色素の薄い姿に対して好感が持てる、という意味で言ったのだけど・・・これではまるで告白だ。


@クロウ

「!!・・・何なんだ、お前は。」


クロウは、不機嫌そうにぷいっと背を向けてしまった。色の薄い耳がほんのり赤く色づいて見える。


@ノエル

(照れてるのかな・・・意外と純粋な王子なのかも)


自分の存在を否定し、人を突き放すような態度を取るクロウ。

彼は今までどんな痛みを抱えてきたのだろう。

どこか寂しそうなその背中を見て、私は、何とかして彼の笑顔を見てみたいと思わずにはいられなかったー・・・


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