第1話:淋しい目覚め


○明るい陽の差し込む森の中


目の前に現れた王子は、どこか寝ぼけたような様子で辺りを見渡した。

派手なシャツに、ピアス、少し色のついた眼鏡をかけ、きりっと釣り上った眉が気の強そうな、どこか少し怖いような印象も与える。


私は、おそるおそる声をかけてみた。


@ユリア

「あ、あの・・・はじめまして?」


@王子

「!!」


王子は、少し驚いたようにこちらへ視線を向ける。

眼鏡の奥の鋭い瞳は、どこを見ているのかよくわからない。


@王子

「お前・・・・!」


突然王子が距離を詰めてきたため、私は驚いて後ずさる。


@ユリア

「あ、あの・・・?」


@王子

「ルシエル、なのか??」


@ユリア

「え??」


王子は、後ずさる私を気にも留めず、さらに距離を詰めて顔を覗き込んでくる。


@ユリア

「あ、あの、私はユリア、といいます。」


突然至近距離に迫った端正な顔立ちにドキドキしながら答える。


@王子

「ユリア・・・?ルシエルではないのか?」


王子はいぶかしげに首をかしげて私から少し距離を取った。

それから、気を取り直したように改めてこちらへ向き直ると、礼儀正しくお辞儀をした。


@王子

「人違いだったようですね。失礼しました。」


王子はその外見からは意外なほど優しく微笑んだ。


@王子

「僕はイリス。色彩の国の王子です。」


@ユリア

「妹さん、ルシエルさんって言うんですか」


@イリス

「はい。・・・・あいつが、いるわけがない、か」


イリスは穏やかにうなずいた後、少し目を伏せてひとりごとのようにつぶやいた。


@ユリア

「いるわけがない、って・・・?」


@イリス

「いえ、なんでもありません。」


派手な外見に似合わない、とても優しく品のある話し方。


その言動がまさに「王子」であることを裏付けているようだ。けれど・・・


@ユリア

「あの、敬語はやめませんか?」


そう提案すると、イリスはじっとこちらを見て、優しく微笑んだ。


@イリス

「そうだな。そう言ってもらえるのなら、お互いに、ね。」


@ユリア

「!っうん!よろしくね、イリス王子。」


@イリス

「呼び捨てでいいよ、ユリア姫。」


@ユリア

「じゃあ、イリス・・・私のことも呼び捨てで構わないから。」


@イリス

「ありがとう。・・・ユリア・・・さん。女性をいきなり呼び捨ては出来ないから、せめて、これで。」


@ユリア

「そう?構わないけど・・・」


@イリス

「・・・・・」


突然の、沈黙。


@ユリア

「あ、あの!そんなに、私、似ているの?その、ルシエル様に・・・」


じっと見つめられる瞳に落ち着かず、そう尋ねると、イリスははっと我に帰ったように目を見開いた。


@イリス

「・・・っ!ごめんね、見すぎていたね。」


@イリス

「似ているというか、まるで同じに「感じ」た・・・こんなことは初めてだ・・・」


@ユリア

「え??なに??」


@イリス

「あ、いや。・・似ているよ。何て言うかな、雰囲気が。」


@ユリア

「そう・・・?妹さんとは、仲がいいんだね。」


@イリス

「そうだね。仲は良かったよ。・・・とてもね。」


懐かしむような、切なげな声に胸がざわつく。


@ユリア

「良かった?今は、違うの??」


@イリス

「今は、もう会えないんだ。二度と・・・」


苦しそうなイリスの声に、何か深い事情があることを感じ、思わず口をつぐむ。


@ユリア

「ごめんなさい・・・私、無神経なことを」


@イリス

「いや、大丈夫だよ。というか、乗り越えなければいけないんだ。こんな風に、初対面の女性を妹と重ねるなんて、俺のほうが無神経だ。」


@ユリア

「乗り越えなければ、いけない?」


@イリス

「事故でね。俺は偶然助かったんだけど、妹は、目を覚まさなかった・・・数年前のことだ。」


@ユリア

「そうだったの・・・」


イリスは、その優しい微笑みを崩すことはなかったものの、切ない響きのその声は、まるで泣いているように思えて、私は思わず彼の頭をそっとなでた。


@イリス

「!?」


@ユリア

「あ・・・ごめんなさい!私、落ち込んでる時、こうして頭をなでてもらえると落ち着くから、って思ったんだけど・・・王子様にこんなこと・・」


あわてて引っ込めようとした手を、イリスの大きな手がつかんだ。


@ユリア

「え??」


@イリス

「ありがとう。じゃあもう少しだけ、こうしててくれるかな?」


@ユリア

「う、うん!・・・いいよ。どれだけでも。」


甘えるようなイリスの態度に、ドキドキする心を抑えながら、優しく頭をなでる。

自分より頭一つ分以上背の高いイリスが、今だけは自分より小さな男の子のように思えた。

そして私は、彼のことをもっと知りたい、そう思った・・・。


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